外国人の労務管理
外国人労働者の雇入れ・離職の際にはその氏名、在留資格などについて届出が必要です。
雇用対策法(平成19年10月1日施行)に基づき、外国人を雇用する事業主には、外国人労 働者の雇入れおよび離職の際に、その氏名、在留資格などについて、ハローワークへ届け出る ことが義務づけられています。
雇用対策法 (昭和四十一年法律第百三十二号)より
(外国人雇用状況の届出等)
第二十八条 第一項 事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合またはその雇用する外国人が離職した場合には、 厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格、在留期間その他厚生労働省 令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
届出の対象となる外国人の範囲
日本の国籍を有しない、在留資格「外交」「公用」以外の外国人が届出の対象となります。
※「特別永住者」(在日韓国・朝鮮人等)は、特別の法的地位が与えられており、日本国内 における活動に制限がありません。このため、特別永住者は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされていますので、確認・届出の必要はありません。
届出の方法
外国人雇用状況の届出方法については、届出の対象となる外国人が雇用保険の被保険者とな るか否かによって、使用する様式や届出先となるハローワーク、届出の提出期限が異なります。
1、 雇用保険の被保険者となる外国人についての届出
雇用保険資格取得届に①氏名 ②在留資格 ③在留期間 ④生年月日 ⑤性別 ⑥国籍・地域 ⑦資格外活動許可の有無 ⑧雇入れに係る事業所の名称および所在地など、記載が必要な事項の他、国籍・地域」や「在留資格」などを記入してハロー ワークに提出することによって、外国人雇用状況の雇入れの届出を行ったこ とになります。(在留カード等の写しの添付も必要です。)
離職の場合も資格喪失届に同様の記載が必要となります。
※届出期限 雇入れをした月の翌月10日まで 離職した日の翌日から10日以内
2、 雇用保険の被保険者とならない外国人についての届出
外国人雇用状況届出書に①氏名 ②在留資格 ③在留期間 ④生年月日 ⑤性別 ⑥国籍・地域 ⑦資格外活動許可の有無 ⑧雇入れ又は離職年月日 ⑨雇入れ又は離職に係る事業所の名称、所在地等の届出事項を記載して 届け出が必要です。
※届出期限 雇入れ、離職の場合ともに翌月の末日まで
届出事項の確認方法
外国人雇用状況の届出に際しては、外国人労働者の在留カードまたは旅券(パスポート)などの 提示を求め、届け出る事項を確認が必要です。 また、留学」や「家族滞在」などの在留資格の外国人が資格外活動許可を受けて就労する場合 は、在留カードや旅券(パスポート)または資格外活動許可書などにより、資格外活動許可を受けていることを確認してください。在留カード等のコピーをハローワークに提出する必要はありませ ん。なお、「特別永住者」(在日韓国・朝鮮人等)の方は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされておりますので確認・届け出の必要はありません。
外国人労働者の雇用管理の改善等に関して 事業主が適切に対処するための指針
厚生労働省は、外国人労働者の雇用管理の改善を事業主の努力義務として外国人労働者が日本で安心して働き、その能力を十分に発揮する環境 が確保されるよう、事業主が行うべき事項について定めています。
指針の主な内容
募集・採用
募集・採用時に国籍で差別しない公平な採用選考を行いましょう。 日本国籍でないこと、外国人であることのみを理由に、求人者が採用面接 などへの応募を拒否することは、公平な採用選考の観点から適切ではありません。
法令の適用
労働基準法や健康保険法などの労働関係法令および社会保険関係法令は、当然ながら 国籍を問わず外国人にも適用されます。また、労働条件面での国籍による差別も禁止されています。
「専門的・技術的分野」の労働者
「専門的・技術的分野」の在留資格をもつ外国人労働者は、企業の人事 管理などの改善を図ることで、その就業を促進し、企業の活性化・国際化 を担う人材となることが期待されています。新規学卒者などを採用する際に、留学生向けの募集・採用を行うことも効果的です。
解雇の予防および再就職援助について
事業規模の縮小などを行おうとするときは、外国人労働者に対して安易 な解雇等を行わないようにするとともに、やむを得ず解雇等を行う場合は、 再就職希望者に対して、その外国人労働者の在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助を行うように努めることが必要です。
外国人労働者の雇用管理の改善等に関するポイント
指針のうち、雇用管理の改善および再就職の促進に関するポイントをまとめています。
基本的な考え方◆
事業主は外国人労働者について、 労働関係法令および社会保険関係法令を遵守すること。 外国人労働者が適切な労働条件および安全衛生の下、在留資格の範囲内で能力を発揮しつつ就労 できるよう、この指針で定める事項について、適切な措置を講ずること。
外国人労働者の募集および採用の適正化
- 1、募集
募集に当たって、従事すべき業務内容・賃金、労働時間、就業場所、労働契 約期間、労働・社会保険関係法令の適用に関する事項について、書面の交付ま たは電子メール(希望のあった場合に限る)により、明示すること。特に、外 国人が国外に居住している場合は、事業主による渡航費用の負担、住居の確保 等の募集条件の詳細について、あらかじめ明確にするよう努めること。 国外に居住する外国人労働者のあっせんを受ける場合には、許可または届出 のある職業紹介事業者から受けるものとし、職業安定法または労働者派遣法に 違反する者からはあっせんを受けないこと。 職業紹介事業者に対し求人の申込みを行うに当たり、国籍による条件を付するなど差別的取扱いをしないよう十分留意すること。
- 2、採 用
採用に当たって、あらかじめ、在留資格上、従事することが認められる者で あることを確認することとし、従事することが認められない者については、採用してはならないこと。 在留資格の範囲内で、外国人労働者がその有する能力を有効に発揮できるよ う、公平な採用選考に努めること。 新規学卒者等を採用する際、留学生であることを理由として、その対象から 除外することのないようにするとともに、異なる教育、文化等を背景とした発 想が期待できる留学生の採用により、企業の活性化・国際化を図るためには、 留学生向けの募集・採用を行うことも効果的であることに留意すること。
適正な労働条件の確保
- 1 、均等待遇
労働者の国籍を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件につ いて、差別的取扱いをしてはならないこと。
- 2、 労働条件の明示
外国人労働者との労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な 労働条件について、当該外国人労働者が理解できるようその内容を 明らかにした書面を交付すること。(労働条件の明示は、その労働者の母国語で明示することが望ましい。)
- 3 、適正な労働時間の 管理等
適正な労働時間の管理を行うほか、労働者名簿等の調製を行うこと。
また、外国人労働者の旅券等を保管しないようにすること。また、 退職の際には、当該労働者の権利に属する金品を返還すること。
- 4 、労働基準法等関係法令 の周知
関係法令の定めるところによりその内容について周知を行うこと。 その際には、分かりやすい説明書を用いる等外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めること。
安全性の確保
- 1、 安全衛生教育の実施
外国人労働者に対し安全衛生教育を実施するに当たっては、当該外 国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと。特に、外国人労働者に使用させる機械設備、安全装置または保護具の使用方 法等が確実に理解されるよう留意すること。
国ごとの文化の違いにより、わからなくともわかったと返事をしてしまう労働者もいます。本当に理解しているか確認することも必要です。
- 2、 労働災害防止のための 日本語教育等の実施
外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができ るようにするため、必要な日本語および基本的な合図等を習得させ るよう努めること。
- 3、労働災害防止に関する 標識、掲示等 事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示等について、図解等の方法を用いる等、外国人労働者がその内容を理解できる方法 により行うよう努めること。また、労働安全衛生法等の定めるとこ ろにより健康診断を実施すること。
- 4 、労働安全衛生法等関係 法令の周知
関係法令の定めるところによりその内容についてその周知を行ううこ と。その際には、わかりやすい説明書を用いる等外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めること。
雇用保険、労災保険、健康保険および厚生年金保険の適用
- 1、制度の周知および必要 な手続きの履行
雇用保険、労災保険、健康保険および厚生年金保険に係る法令の内 容および保険給付に係る請求手続等について、周知に努めること。 労働・社会保険に係る法令の定めるところに従い、被保険者に該当 する外国人労働者に係る適用手続等必要な手続をとること。
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2 、保険給付の請求等につ いての援助
外国人労働者が離職する場合には、離職票の交付等、必要な手続を行うとともに、失業等給付の受給に係る公共職業安定所の窓口の 教示その他必要な援助を行うように努めること。 労働災害等が発生した場合には、労災保険給付の請求その他の手 続に関し、外国人労働者からの相談に応ずること、当該手続を代行 すること、その他必要な援助を行うように努めること。 厚生年金保険への加入期間が6ヵ月以上の外国人労働者が帰国す る場合、帰国後に脱退一時金の支給を請求し得る旨を説明し、年金 事務所等の関係機関の窓口を教示するよう努めること。
適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等
- 1、 適切な人事管理
職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、職場における円 滑なコミュニケーションの前提となる条件の整備、評価・賃金決定、 配置等の人事管理に関する運用の透明化等、多様な人材が能力発揮 しやすい環境の整備に努めること。
- 2、 生活指導等 日本語教育および日本の生活習慣、文化、風習、雇用慣行等につい て理解を深めるための指導を行うとともに、外国人労働者からの生活上または職業上の相談に応じるように努めること。
- 3、 教育訓練の実施等
教育訓練の実施その他必要な措置を講ずるように努めるとともに、 苦情・相談体制の整備、母国語での導入研修の実施等働きやすい職 場環境の整備に努めること。
- 4 福利厚生施設
適切な宿泊の施設を確保するように努めるとともに、給食、医療、 教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、十分な機会が保障されるように努めること。
- 5 帰国および在留資格の 変更等の援助
在留期間が満了する場合には、雇用関係を終了し、帰国のための手 続の相談等を行うように努めること。また、在留資格の変更等の際 は、手続に当たっての勤務時間の配慮等を行うように努めること。
- 6 労働者派遣または請負
を行う事業主に係る 留意事項 派遣元事業主は、労働者派遣法を遵守し、適正な事業運営を行うこ と。 • 従事する業務内容、就業場所、当該外国人労働者を直接指揮命令 する者に関する事項等、派遣就業の具体的内容の当該外国人労働 者への明示 • 派遣先に対し派遣する外国人労働者の氏名、労働・社会保険の加 入の有無の通知等 派遣先は、労働者派遣事業の許可または届出のない者からは外国人 労働者に係る労働者派遣を受けないこと。さらに、請負を行う事業 主にあっては、請負契約の名目で実質的に労働者供給事業または労 働者派遣事業を行わないよう、職業安定法および労働者派遣法を遵 守すること。 請負を行う事業主は、雇用する外国人労働者の就業場所が注文主で ある他事業主の事業所内である場合に、当該事業所内で、雇用労務 責任者等に人事管理、生活指導等の職務を行わせること。
解雇の予防および再就職援助
事業規模の縮小等を行う場合は、外国人労働者に対して安易な解雇等を行わないようにするとともに、 やむを得ず解雇等を行う際は、再就職を希望する者に対して、関連企業等へのあっせん、教育訓練等 の実施・受講あっせん、求人情報の提供等当該外国人労働者の在留資格に応じた再就職が可能となる よう、必要な援助を行うように努めること。
外国人労働者の雇用労務責任者の選任
外国人労働者を常時十人以上雇用するときは、この指針に定める雇用管理の改善等に関する事項等を管理させるため、人事課長等を雇用労務責任者として選任すること。
外国人労働者は当然ながら、言葉や文化の違う日本でホームシックに堪えながら仕事をしています。
そういった事への配慮も外国人労働者を雇用するには必要なことでしょう。