経営・管理
1.在留資格「経営・管理」の動き
「経営・管理」の在留資格は、平成26年の入管法の法改正により、当時の「投資・経営」の在留資格を改正して設けられました。
(旧)「投資・経営」では外国人が日本に投資していることが前提とされていましたが、外資の参入している企業の経営・管理業務に外国人が従事することができるように、新たな在留資格として「経営・管理」が創設されました。
2.「経営・管理」の該当範囲
日本において貿易その他の事の経営を行い、又はその事業の管理に従事する活動をいいます。この場合、在留資格「法律・会計業務」で必要とされる資格がなければ法律上行うことができない事業の経営又は管理に従事する活動を除きます。
「経営・管理」の該当範囲
「経営・管理」の在留資格に該当する活動の類型は以下のとおりです。
①日本において事業の経営を開始してその経営を行い又はその事業の管理に従事する活動
②日本において既に営まれている事業に参画してその経営を行い又はその事業の管理に従事する活動
③法人を含む日本において事業の経営を行っている者に代わってその経営を行い又はその事業の管理に従事する活動
※日本において貿易その他の事業の経営を行い
「日本において貿易その他の事業の経営を行い」とは、具体的には以下のことをいいます。
ア.日本において活動の基盤となる事務所等を開設し、貿易その他の事業の経営を開始して経営を行うこと
イ.日本において既に営まれている貿易その他の事業の経営に参画すること
ウ.日本において貿易その他の事業の経営を開始した者若しくは日本におけるこれらの事業の経営を行っている者に代わってその経営を行うこと
※その事業の管理に従事する
「その事業の管理に従事する」とは、具体的には以下のことをいいます。
ア.日本において経営を開始してその経営を行っている事業又は経営に参画している事業の管理に従事すること
イ.日本において貿易その他の事業の経営を開始した者若しくは日本におけるこれらの事業の経営を行っている者に代わってその管理に従事すること
(1)該当範囲に関する注意点について
- ①日本において適法に行われる業務であればその活動の業種に制限はありません。
- ②申請人が経営又は管理に従事する事業は、外国人若しくは外国法人が現に投資しているものだけではなく、日本人若しくは日本法人のみが投資しているものであっても、「経営・管理」の在留資格に該当します。
- ③経営又は管理に従事する者が、純粋な経営又は管理に当たる活動のほかに、その一環として行う現業に従事する活動は、「経営・管理」の在留資格の活動に含まれます。ただし、主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は、「経営・管理」の在留資格に該当しません。
- ④「経営・管理」における事業は、営利を目的としないものであっても、また、外国又は外国の地方公共団体(地方政府を含む。)の機関の事業として行われるものでも差し支えありません。
- ⑤複数の者が事業の経営又は管理に従事している場合には、それだけの人数の者が事業の経営又は管理に従事することが必要とされる程度の事業規模、業務量、売上げ、従業員数がなければなりません。これらを基準に見て、申請人が事業の経営又は管理主たる活動として従事すると認められるかどうかを判断します。
具体的には、「事業の規模や業務量等の状況を勘案して、それぞれの外国人が事業の経営又は管理を主たる活動として行うことについて合理的な理由が認められること」「事業の経営又は管理に係る業務について、それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること」「それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬の支払を受けることとなっていること」などの条件が満たされている場合には、それぞれの外国人について「経営・管理」の在留資格に該当するといえます。
- ⑥「経営・管理」の在留資格の決定にあたっては、個人事業は登記が必要とはされておらず、また、株式会社等を設立する準備を行う意思があることや株式会社等の設立がほぼ確実に見込まれることが提出書類から確認できた場合は、登記事項証明書の提出を不要としていることから、登記事項証明書(登記簿謄本)の提出がないことのみをもって不交付(不許可)処分を行うことのないよう留意されることとなっています。
- ⑦入国・在留を認める役員の人数については、それ自体に制限はなく、その者の行おうとする活動に在留資格該当性が認められない場合又は基準適合性が認められない場合、その他在留状況に問題がある場合など在留を認めるべき相当の理由がないときを除いて、人数の観点から不許可・不交付とすることはできないこととされています。
(2)在留資格該当性に関する注意点
- ①事業の経営又は管理に実質的に従事するものであること
「事業の経営に従事する活動」には、事業の運営に関する重要事項の決定、業務の執行、監査の業務等に従事する代表取締役、取締役、監査役等の役員としての活動が該当します。
「事業の管理に従事する活動」には、事業の管理の業務に従事する部長、工場長、支店長等の管理者としての活動が該当すします。申請人は、これらの経営や管理の業務に実質的に参画し、又は従事するものでなければならず、実際に行う業務の内容を確認して判断されます。
- ②経営や管理に従事する活動の判断
申請人が新たに事業を開始しようとする場合は、申請時において、実際には申請人は事業の経営や管理に従事する活動にはいまだ参画等していないのが通常です。そのため、開始する事業の内容の具体性や、申請人が取得した株式や事業に投下している資金の出所等の事業の開始に至る経緯全般から、申請人が単に名ばかりの経営者ではなく、実質的にその事業の経営を行う者であるかどうかが判断されます。
- ③事業の継続性
与えられた在留期間の途中で事業が継続が厳しくなるなど、在留活動が途切れることが想定されるような場合は、「経営・管理」の在留資格に該当する活動を行うものとは認めらません。外国人が在留資格を得て経営又は管理に従事する事業が安定して営まれるものと客観的に認められることが必要と言えます。
(3)他の在留資格との関係
- ①在留資格「技術・人文知識・国際業務」との関係性
企業の経営活動や管理活動は、自然科学若しくは人文科学の知識等を要する業務に従事する活動である場合もあり、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に定める活動と一部重複する場合もあります。このように重複する場合は「経営・管理」の在留資格が決定されます。
- ②「法律・会計業務」との関係
企業に雇用される弁護士、公認会計士などの専門知識をもって経営又は管理に従事する者の活動も「経営・管理」の在留資格に該当しますが、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、外国公認会計士等の資格を有しなければ行うことが出来ないとされている事業の経営又は管理に従事する活動は、「法律・会計業務」の在留資格に該当します。
(4)事業所の所在・確保に関する留意事項
(5)事業の継続性
事業の継続性については、当然ながら今後の事業活動が確実に行われることが見込まれなければなりません。
事業活動においては様々な要因で赤字決算とはなり得ますが、機械的に単年度の決算状況を重視するのではなく、賃借状況なども含めて総合的に判断することが必要です。
債務超過が続くような場合は、資金の借入先を確認するなどし、事業の実態、本人の活動実態に虚偽性がないかなどを確認する必要もあります。
(6)決算状況
例えば直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合、直近期末において債務超過となっていないが過去債務超過である場合、直近期末において債務超過であるが、直近期前期末までは債務超過となっていない場合、直近期末及び直近期前期末、共に債務超過である場合等、さまざまなケースが考えられます。
自社の状況を十分に把握し、対策を考える必要があります。
3.在留期間
「経営・管理」の在留期間は、以下の基準を参考に決定されます。(もちろん、その他の状況も踏まえて総合的に判断されます)
5年
次の①、②及び⑤のいずれにも該当し、かつ、③又は④のいずれかに該当するもの
3年
次のいずれかに該当するもの
1年
次のいずれかに該当するもの
-
①経営する、又は管理に従事する機関がカテゴリー4(カテゴリー1,2及び3のいずれにも該当しない団体・個人)に該当するもの
-
②3年の在留期間を決定されていた者で、在留期間更新の際に5年の在留期間の項の①又は②にいずれかに該当しないもの
-
③職務上の地位、活動実績、所属機関の活動実績等から、在留状況を1年に1度確認する必要があるもの
4月
新たに事業を法人において行おうとするものであって、入管法施行規則別表第三の「経営・管理」の項の下欄に定める資料のうち、登記事項証明書の提出がないもの
3月
滞在予定期間が3月以下であるものであって、4月の項に該当しないもの
4「経営・管理」の許可基準
次のいずれにも該当していることが必要です。
※事業所の定義
以下の2つの要件を満たしていることが必要です。
・経済活動が単一の経営主体の下において一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること
・財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的に行われていること
(1)事業規模
②ハは、イやロに該当しない場合であっても、イ又はロに準ずる規模であるときは規模に係る基準を満たすと言えます。「準ずる規模」であるためには、営まれる事業の規模が実質的にイ又はロと同視できるような規模でなければなりません。
イに準ずる規模とは、例えば、常勤職員が1人しか従事していないような場合に、もう1人を従事させるのに要する費用を投下して営まれているような事業の規模がこれに当たります。ロに準ずる規模とは、例えば、外国人が個人事業の形態で事業を開始しようとする場合に、例えば500万円以上(一律には確定できません)を投資して営まれているような事業の規模がこれに当たります。
(2)実務経験
実務経験を要求されるのはあくまで「事業の管理に従事」する場合です。
日本又は外国の大学院において経営又は管理に係る科目を専攻して教育を受けた期間は、「実務経験」期間に算入されます。